インバウンド需要を狙った浅草という立地
インバウンド需要の高まりを見せていた東京都内。私たちは、外国人に人気のエリアである「浅草」に着目していました。2015年から物件探しを行い、2016年に競売でこの物件に出会いました。
オーナー様と共に競売に参加し、ギリギリ一番手で無事落札したものの、施設をオープンできたのは2018年8月でした。
この空白の2年間は、旧所有者、地主との物件の調整に大変な時間を費やしてしまったのです。
競売で正式に所有権を取得していた私たちですが、すぐにはリノベーション工事は着工できませんでした。私たちは「借地非訟」の手段をとり、約2年がかかりで無事にこの物件を利用できるようになります。
玉石混合の民泊が乱立する浅草で、「一点モノ」ホテルにこだわる理由
浅草はすでに外国人観光客からは定番の人気を誇る土地で、インバウンドという言葉が馴染む頃には、玉石混合の民泊やホステルが有象無象に存在していました。その中で私たちは、「一点モノ」であることにこだわり、1Fに自社運営のイタリアンバー、2-4Fにドミトリー型のホステルを作ることにしました。
マンションの一室タイプの民泊と差別化を図るべく、イタリアンバーを中心に様々な人が交流できる「コミュニティ」のハブとなるホステルにすることで、外国人観光客の人気を狙いました。
そのようなコンセプトで2018年にオープンしたホステルですが、需給バランスの悪さゆえ、単価、稼働率共に想定にはほど遠くとても苦戦をしました。そして、追い打ちをかけるようにやってきた次なる困難は新型コロナウイルスの蔓延でした。
コロナ禍の起死回生の一手はサウナホテルへの業態変更。サウナシュランを獲得するほどの人気施設へ躍進
2020年のコロナの影響で、売上は30万円/月ほどに。オーナー様になんとか数字で応えたい想いから、契約形態を売上連動の成果報酬型から5年間の固定賃料型へ切り替えさせていただきました。
私たちの事業としても“必ず成果を出さないといけない”、新たな一手が必要とされる苦境に立たされました。
そこで私たちが目をつけたのが、その頃ブームになり始めていた「サウナ」です。2020年のドラマ「サ道」の放送をきっかけに、都内ではサウナ施設が次々と生まれ、「サウナー」「ととのう」などの言葉も話題になるなど、そのブームは一気に加速していきました。
この「サウナ」を浅草のホテルに取り入れることを考え始めた私たちは、通り一辺倒のやり方ではなく、“強力な独自の世界観を持ったサウナブランド”とタッグを組む必要があると考えました。この頃、サウナを扱う雑誌も多く出版されていましたが、その中でも異質でありながらクラウドファンディングで1,000万円以上の支援を集めていた雑誌「サウナランド」が注目されていました。
「サウナランド」は、幻冬舎の人気編集者である箕輪厚介氏が手掛ける雑誌で、他の雑誌とは一線を画した企画・コンテンツ・デザインで、圧倒的な世界観を表現している雑誌です。この「サウナランド」とタッグを組むことで、浅草のホステルも新しいブランド・機能として売り出せると考えました。
箕輪厚介氏と打ち出したコンセプトは「“それぞれの自由”で、好きな時間を過ごすサウナ」で、都内では極めて珍しい「薪ストーブ」を使ったサウナ室や、サウナ後の食事を仲間と楽しめる鉄板・キッチンを備えたラウンジなど、他の施設にはない、独自の魅力ある空間作りを意識しました。
また、ホテル客室もドミトリー型から50㎡を超えるサウナ付きのライフスタイルホテル客室に方向転換。コロナ禍の2022年7月にオープンし、サウナ界の権威である「サウナシュラン(サウナ版のミシュランのような権威性のあるアワード)」を獲得する大人気施設となりました。
ホテル客室の稼働率は95%を超え、売り上げもコロナ前の2倍以上、550〜600万円/月(延床90坪)まで伸ばすことができました。
私たちはどんな困難が訪れようとも、オーナー様と共に結果にこだわる姿勢で伴走することでバリューを提供できるようこだわっています。本プロジェクトでは、そのような私たちのスタンスが結果に結びついたものかと考えております。