福岡のポテンシャルを最大限引き出す土地探し
東京オリンピックに向けたインバウンド需要の高まりは、2016年ごろに東京や大阪で大きな盛り上がりを見せていました。「この流れは今後、地方都市へも確実に波及する」と予測していた私たちが、首都圏以外のホテル開発を視野に入れ始めていたのもこの頃です。
地方都市の中でも人口150万人を超える福岡は、その規模の商圏でありながら、企業もホテルも、東京や大阪の支社やグループ会社の進出が中心で、独立した事業者は多くはありませんでした。一方で、東アジアからの近さ、空港からの高アクセス、美味しい食事と、多くの魅力がある福岡には大きな可能性が秘められていることは明白でした。そのため、プレイヤーがまだ少ないこの時期に事業機会があると見込んで、2017年より具体的に福岡で土地を探し始めました。
そして、2018年12月に、天神、中洲エリアまで徒歩圏内の中央区春吉にポテンシャルの高い土地を見つけ、契約。当時はこのエリアにホテルは少ないものの、2023年に博多駅から最寄駅までの路線延伸が予定されており、今後、非常に価値の高まる場所と判断しました。
好立地とライフスタイルホテルの融合による相乗効果
次に必要だったのは利用者のニーズに合わせたホテル企画。そこで私たちは「ライフスタイルホテル」というコンセプトを採用し、この場所の“必然性”に目をつけた企画を打ち出します。
当時の福岡には、大手ホテルチェーンや民泊、アパートメントタイプのホテルはありましたが、東京や大阪で徐々に増えていたライフスタイルホテルはほとんど存在していませんでした。
しかし、インバウンドの客層(特に福岡の場合は韓国や台湾からの家族連れやグループ)は「グループ利用」を好み、広々としたオリジナリティのある客室が求められると考えていたので、Hotel Meiは40㎡、60㎡、80㎡の部屋を含む7つの客室タイプ設け、こだわりの内装を設計していきました。
ちなみに、東京でこのような広く、内装にこだわった客室を作ることは、そもそもの土地代が高いこともあり、投資対効果があいずらいのが現実です。一方、福岡は土地代が比較的安く、さらにインバウンド需要と客室単価は東京とさほど変わらないため、投資対効果の良い企画を実現できたのも、地方都市を開発することのメリットの1つだったと考えています。
客室でのバリューアップだけでなく、Hotel Meiの価値を高めるために「ホテル×飲食」の戦略にもチャレンジ。1階に自社運営の「Mei Cafe」を併設しました。朝食プランの導入も行い、客単価の向上に寄与するだけでなく、目玉商品のフルーツサンドがいわゆる“バズった”こともあり、Instagramフォロワー2万人近くを誇る人気店となり、Hotel Meiの価値を大いに高めました。ゲストによるインスタのリールの再生数が1800万回を超えたこともありました。
カフェを自社運営にした理由は、ライフスタイルホテルとしての「一貫した世界観」を実現するためです。コンビニやチェーンカフェでは実現できない「Meiらしさ」を追求し、滞在者と地元客をボーダレスにつなぐことで、Hotel Meiの独自の世界観を作り上げ、人気を確立しました。
順調な開業から一転、コロナ禍での厳しい挑戦。そこから人気ホテルへの復活劇
Hotel Meiは月間1,600万円の売上を目標にスタートし、開業後3ヶ月で1,300万円の売上を達成しました。しかし、開業後半年も経たずにコロナ禍に突入。稼働率は70%から10%ほどに落ち込み、売上200万円/月まで減少しました。
この困難な時期を乗り越えるために、様々な打ち手を実施。ユニークで多様なホテルプランの展開、旅行支援を効率的に獲得するWebマーケティング施策、さらには併設カフェのデリバリー活用などを行い、結果として、現在はインバウンド需要の回復も手伝い、稼働率85%を超え、2,300万円/月の売上を達成しています。
このプロジェクトは竣工と同時に別のオーナーに売却されましたが(仲介は7gardenが担当)、私たちは開発時のオーナー様にも、現在の保有者のオーナー様にも、それぞれ価値あるサービスを提供できたと考えています。(現在も運営中)
また、Hotel Meiの開業後、福岡での新しいチャレンジに関心をもつ不動産投資家様からも多数のお問い合わせを受け、別のプロジェクトのサポートにも繋がりました。未開の地での革新的な取り組みや、コロナ禍での厳しい運営に対応することで、7gardenの真価を示すことができたと感じています。